第7回　IFRS16号と日本基準の主な相違点

１．はじめに

　第6回までは日本基準のbg大游官方网站会計について記載してきました。2023年5月2日に企業会計基準公開草案第73号「bg大游官方网站に関する会計基準（案）」が公表されていますが、開発にあたっての基本方針にIFRS第16号「bg大游官方网站」（以下、「IFRS16号」）の主要な定めの内容を取り入れると記載されています。
　このため、主としてIFRS16号の借手の処理の概要を説明するとともに、出来るだけ「bg大游官方网站に関する会計基準（案）」の文言を使用した表現で記載しています。

２．会計基準の概要

(1) 経緯

　2016年1月に国際会計基準審議会（IASB）から公表されたIFRS16号では、借手の会計処理について、ファイナンス・bg大游官方网站とオペレーティング・bg大游官方网站の区分がなくなり、原資産の引渡しによりbg大游官方网站の借手に支配が移転した使用権部分に係る資産（使用権資産）と当該移転に伴う負債（bg大游官方网站負債）を計上する使用権モデルが採用されました。この結果、IFRS16号が強制適用される2019年1月からは、オペレーティング・bg大游官方网站を含む全てのbg大游官方网站契約は、基本的にオンバランスされています。

(2) bg大游官方网站の定義

　IFRS16号では、bg大游官方网站は原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分と定義されており、契約にbg大游官方网站が含まれているか否かは、顧客が特定された資産の使用を一定期間にわたり支配するかどうかで判断することとされています。
　例えば、事務所等の不動産賃借契約は、契約で場所が特定され、かつ、賃貸借契約期間中に借主が賃借物件を通常支配していると考えられるため、IFRS16号のbg大游官方网站の定義を満たすことになります。また、工場内に設置された発電所について、電力量全てを購入し、発電所の使用方法（産出する電力の量及び時期）を購入者が決定できるような契約の場合は、資産の特定と支配の移転があると判断されるため、IFRS16号のbg大游官方网站の定義を満たす場合もあります。
　このように、ファイナンス・bg大游官方网站やオペレーティング・bg大游官方网站といったbg大游官方网站契約のみならず、法形式ではbg大游官方网站契約ではない取引も、実質的にbg大游官方网站と判断される場合もあります。

(3) 借手のbg大游官方网站期間

　借手のbg大游官方网站期間については、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、借手が行使することが合理的に確実であるbg大游官方网站の延長オプションの対象期間及び借手が行使しないことが合理的に確実であるbg大游官方网站の解約オプションの対象期間を加減算して決定することとされています。
　契約上明記されている場合には当該期間を利用することになりますが、不動産の賃貸借契約で、借手からの解約申し出がない限りは自動更新する契約になっている場合には、いつまでをbg大游官方网站期間とするか合理的に見積る必要があります。見積にあたっては、過去の実績、賃料水準、移転コスト等を総合的に検討することになると考えられます。

(4) bg大游官方网站開始日の使用権資産及びbg大游官方网站負債の計上額

　借手はbg大游官方网站開始日において、全てのbg大游官方网站について使用権資産とbg大游官方网站負債を計上します。bg大游官方网站負債についてはbg大游官方网站開始日において未払である借手のbg大游官方网站料総額からbg大游官方网站料に含まれている利息相当額の合理的見積額を控除した現在価値により算定します。現在価値を計算するために使用する割引率は原則として貸手によるbg大游官方网站の計算利子率とされていますが、容易に入手できない場合には、借手の追加借入利子率を採用します。また、使用権資産については、bg大游官方网站負債に、前払bg大游官方网站料や現状回復費用等の付随費用を加算して算定することとされています。

(5) 免除規定

　IFRS16号では原則として使用権資産とbg大游官方网站負債を貸借対照表に計上する必要がありますが、短期bg大游官方网站と少額資産のbg大游官方网站については免除規定が設けられています。
　短期bg大游官方网站はbg大游官方网站開始日においてbg大游官方网站期間が12カ月以内であるbg大游官方网站とされていますが、購入オプションを含むbg大游官方网站は対象外とされています。また、個別のbg大游官方网站において、資産が新品である時点での価値に基づいて少額であると判断できるのであれば、免除規定を適用できます。少額の金額について明確な基準はありませんが、IFRS16号の開発時に新品時に5千米ドル以下という規模の価値の原資産を念頭において免除規定が設けられたこともあり、5千米ドルが目安になっています。

(6) 使用権資産の償却

　使用権資産は将来の経済的便益を企業が消費すると予想されるパターンを反映するように償却することとされているため、定額法で償却を行うケースが多いと考えられます。また、償却年数は、基本的にbg大游官方网站期間に基づくことになりますが、例えば、不動産の賃借で内装工事等を行った場合には、自社資産である内装工事に係る耐用年数と使用権資産の償却期間は、整合している必要があると考えられます。
　なお、使用権資産は減損会計の適用対象となり、ファイナンス・bg大游官方网站か否かを問わず、全ての使用権資産が対象となるため、減損会計の適用対象範囲はIFRS16号適用前より広くなっています。

(7) bg大游官方网站負債の処理

　bg大游官方网站開始後、bg大游官方网站負債の残高に一定の金利を乗じて計算された利息費用をbg大游官方网站負債の帳簿価額を増額させるとともに、bg大游官方网站料を支払った場合には、bg大游官方网站負債を減額させます。bg大游官方网站負債の残高が多い期間は利息費用が多く計上され、bg大游官方网站負債の残高が減少するにしたがって利息費用は減少していきます。

(8) bg大游官方网站契約条件の変更

　bg大游官方网站の契約条件の変更によりbg大游官方网站の範囲が拡大し、実質的に変更前のbg大游官方网站とは独立したbg大游官方网站が生じていると判断された場合には、bg大游官方网站の契約条件の変更を独立したbg大游官方网站契約として使用権資産、bg大游官方网站負債を計上します。一方、bg大游官方网站の範囲が縮小し、変更前のbg大游官方网站の一部または全部を解約するものと判断された場合には、使用権資産やbg大游官方网站負債を減額します。その他、契約延長等の契約条件の変更については、引き続き特定された原資産を使用する権利を有しているため、bg大游官方网站契約条件の変更の発効日において、変更後の条件を反映したbg大游官方网站負債に修正し、bg大游官方网站負債の修正額に対応する金額を使用権資産に加減算することにより、変更前のbg大游官方网站を修正することになります。

(9) セール・アンド・bg大游官方网站バック取引

　セール・アンド・bg大游官方网站バック取引を行った場合には、売手が買手に対して原資産の支配が移転しているかどうかについて、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に基づいて判断します。支配が移転すると認められる場合には売却取引とbg大游官方网站取引として会計処理されますが、支配が移転すると認められない場合には、金融取引として処理されることになります。

３．IFRS16号の影響

　IFRS16号で採用された使用権モデルにより貸借対照表に計上する対象範囲が拡大するために、下記の項目について大きな影響があるとされています。

• 使用権資産とbg大游官方网站負債が貸借対照表に計上されるため、負債比率・自己資本比率等の財務指標が悪化します。
• 使用権資産は定額法で計上される一方で、bg大游官方网站負債に係る利息費用は利息法で計上されます。bg大游官方网站負債残高が大きいbg大游官方网站期間の初期段階では利息費用が相対的に大きく計上されるため、bg大游官方网站期間の初期段階では賃貸借処理を行った場合と比較してbg大游官方网站関連費用が多額になります。
• 使用権資産は減損会計の適用対象のため、減損の対象となる範囲が拡大する可能性があります。特に、店舗を賃借している小売業については、従前は賃借料として費用計上していましたが、IFRS16号を適用すると使用権資産として貸借対照表に計上されることになるため、大きな影響を受ける場合があります。